(1)配偶子致死遺伝子の誘発する突然変異をAFLP法で解析した。Aegilops sharonensis由来の配偶子致死系統と正常系統をコントロールとし、両者の後代で新規に現れるAFLPバンドを探索したが、14プライマーコンビネーションで検出された約650のバンドは全てコントロールで見られたもので突然変異バンドを検出できなかった。前年の解析ではAe.speltoides由来の配偶子致死系統では少数ながら突然変異バンドを検出した。検出した突然変異バンドが少ないため、明確に結論づけられないがAe.speltoides由来の配偶子致死遺伝子の方が変異源性が高いものと思われる。 (2)本研究で単離された配偶子致死遺伝子に密に連鎖する反復配列をプローブとした細胞遺伝学的解析により、次のことが明らかになった。コムギの花粉母細胞から成熟花粉粒に至る各ステージでin situ hybridization法による解析が可能であり、この反復配列プローブが配偶子致死遺伝子の伝達を跡づける良いマーカーであること。花粉第一体細胞分裂で染色体切断が起きている細胞には配偶子致死遺伝子が存在しないこと。応用として、Ae.speltoidesとAe.sharonensis由来の配偶子致死遺伝子のダブルヘミ個体の解析より、どちらか一方の配偶子致死遺伝子を持つ配偶体と比べて、両方ともを持たない個体での染色体切断の頻度と程度は極めて高いことが示された。また、Ae.sharonensis由来の配偶子致死遺伝子がAe.speltoidesのものよりも上位であることも示された。
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