研究概要 |
本研究においては,RecAタンパク質およびそのホモログとDNAの相互作用の解析を中心とし,これに加えて,DNAの相同組換えと修復に関与するいくつかのタンパク質とDNA分子の相互作用の解析を目的としている. 平成11年度の研究実積は以下の通りである. (1)大腸菌RecA全体(フィラメント)を用いた系を用いて,^<19>F核でアミノ酸選択的標識を行うことによってDNA結合部位の解析を試みた.現在までに,RecAへのアミノ酸選択的^<19>F 標識法を確立し,野生型およびF203W変異体を^<19>F 標識することに成功した.^1H-^<19>F(tr)NOE測定によるRecA中の単鎖DNA結合部位の解析が進行中である. (2)大腸菌RecAのN末端33残基部分のペプチドを調製(かつ^<15>N標識)し,この領域が単独でDNA分子に結合することをNMR実験によって示した.現在までの解析の結果,この33残基のペプチドは22-24残基付近(GKG)を中心にしてDNA分子と結合しており,結合状態の高次構造は,RecAフィラメントを構成している際の当該領域の高次構造(αヘリックス)とは異なる可能性が示唆されている.現在,NMR観測にもっとも適した測定条件の検討を行っており,将来的にDNAとの複合体の高次構造決定を試みる. (3)RecA結合タンパク質であるDinIタンパク質を調製し高次構造決定を行った. (4)高度好熱菌MutMタンパク質についてはフラグメント化を行い,大腸菌における大量発現系の構築を行った.これは将来のDNA分子との複合体の構造決定を目的としたものである. (5)酵母Mhr1タンパク質についても,N末端ドメインとC末端ドメインにフラグメント化し,大腸菌における大量発現系の構築を行った.現在NMR測定に向けた大量精製法の確立と安定同位体標識条件の検討を行っている.
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