三宅島において森林生態系の遷移を明らかにすることを目的として以下の研究を行った。 1.11年度設置の調査区(1962溶岩、1874溶岩および8000年以上前の噴火堆積物(極相)に各2カ所)に加え、1983溶岩上に2カ所の調査区を設置した。その結果、(1)他の植物が全く生育しない溶岩上にオオバヤシャブシが侵入し低木林を形成し、その後、タブノキーオオシマザクラ林、スダジイ林へと遷移すること、(2)地上部現存量は125年(1874溶岩)で12-20kg/m^2であり、ハワイの研究例(137年で1.9kg/m^2)に比べ、遥かに大きくなることが明かとなった。これは、オオバヤシャブシの窒素固定作用が遷移を促進しているためと考えられた。 2.土壌断面調査を行い、11年度の規則サンプリングによる土壌分析結果と併せて解析を行った。地上部炭素量は急速に増加するのに対して、土壌炭素量の増加速度は125年で0.4-0.6kg/m^2と遅く、地上部に対する土壌炭素量の比は0.04-0.1と著しく小さかった。一方、極相ではその比は0.7-1.4と大きく、炭素蓄積速度が地上部と土壌で異なる変化様式を持つことが明かとなった。 3.各年代の溶岩上のオオバヤシャブシの葉の窒素濃度を測定した。窒素濃度は年代に関わらず、2%前後と高い値を示した。これは、オオバヤシャブシの窒素固定能力によるものであり、遷移初期の土壌でN濃度が高い(11年度研究成果)のは、窒素を含んだオオバヤシャブシのリター供給が関係していると考えられた。 4.各調査区にリタートラップを設置した。2000年7月より噴火活動が活発化したため、定期的なサンプリングはできなかったが、火山灰が森林生態系の遷移に与える影響に関する基礎データを得ることができた。 5.以上の研究成果と11年度研究成果を基に論文を作成し、国際誌に投稿した。
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