マングローブとは、熱帯、亜熱帯の沿岸域に生息する樹木類の総称である。マングローブは進化の過程で特殊な耐塩性機構を獲得したものと考えられる。マングローブの耐塩性機構を遺伝子レベルで解明できれば、今後、陸上植物の耐塩性の強化につながると期待できる。本研究では、マングローブの一種であるBruguiera sexangulaのcDNAライブラリーを構築し、その中から耐塩性に関与すると考えられる遺伝子(cDNA)のスクリーニングを試みた。大腸菌を宿主とした機能スクリーニング法により耐塩性因子のスクリーニングを行った結果、10^6の形質転換大腸菌のうち29の形質転換体において耐塩性が強化されていることが確認された。これらの形質転換体に導入されたcDNAの制限酵素切断パターンと部分塩基配列を決定した結果、23 cDNA は同一の蛋白質をコードしていることが明らかになった。データベースを利用した相同性解析の結果、この遺伝子がコードする蛋白質に相同性を有する蛋白質は見られなかった。そこで、我々はこの蛋白質をマングリン(mangrin)と命名した。マングリンは141アミノ酸からなる、比較的小さな水溶性蛋白質であり、その20%をセリンが占める極める極めて特徴的な一次構造を有していた。また、その他にribosomal proteinをコードしていると考えられるcDNAの単離にも成功しており、今後、これらのcDNAのコードしている蛋白質の真核生物における機能を評価していく予定である。
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