研究概要 |
アスコルビン酸(ビタミンC)は植物細胞中で活性酸素を消去することにより細胞を酸化的ストレスから防御している。一方、アスコルビン酸を植物細胞外から取り込ませると細胞の伸長成長に影響を及ぼすことから、アスコルビン酸は細胞成長にも関与することが示唆されている。dehydroascorbate reductase(DHAR)は酸化型のアスコルビン酸を還元型に戻す酵素でアスコルビン酸量の維持に重要である。この酵素自体は1980年代に発見されていたが、その遺伝子は長らく単離され得なかった。しかし、申請者のグループは最近イネからこの遺伝子(DHAR1)を世界に先駆けて単離同定することに成功しこれを報告した (Urano et al.FEBS Lett.466:107-111,2000)。これを受けてアスコルビン酸の植物細胞内での生理学的意義を調べる目的で、イネDHAR1をシロイネナズナに導入を試みた結果、イネDHAR1を発現するシロイヌナズナの系統を多数取得できた。遺伝子導入の確認はgenomicDNAを鋳型としたPCR法に用いて行った。更にその植物体を用いてDhar1のタンパク質レベルでの発現量をwestern blotにより検定した結果、系統間では様々なレベルでのDhar1pの発現が確認された。今年度はそれらの株をホモ化することができたので、次年度に野生株と形質転換体の各系統を用いて、通常におけるアスコルビン酸レベルと植物状態、活性酸素を生じ細胞内のアスコルビン酸の量が減少するような状態でのアスコルビン酸と形態、について調べることを計画している。
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