研究概要 |
高等植物の軸性器官における伸長生長は、「細胞壁の力学的伸展」と「細胞の水吸収」という二つの過程の同時進行により成り立っているため、青色光の伸長抑制はこのいずれか、あるいは両方を調節することにより起こっていると考えられる。従って、それぞれの調節機構を知ることは本研究の遂行にとって重要である。報告者は、まず細胞壁の伸展機構に着目し、細胞壁の臨界降伏張力yを制御するタンパク質(yieldin)のcDNAクローニングを行った。 ミトリササゲ黄化胚軸の伸長域から精製されたyieldinタンパク質のN末端アミノ酸配列を決定した。この配列情報をもとにデザインしたオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、RT-PCRを行った。鋳型となるmRNAは、ミトリササゲ黄化胚軸の伸長域から調製したものである。その結果、981塩基対のOpen Reading Frameを含む約1.2キロ塩基対のcDNA断片を得た。これは、23個のアミノ酸からなるシグナルペプチドをもつ327個のアミノ酸配列をコードしていた。シグナルペプチドを除去した成熟yieldinタンパク質の計算上の分子サイズは、33,116Daであり、精製yieldinタンパク質の見かけの分子サイズ(30、32kDa)によく一致していた。また、大腸菌発現系により調製した組換えyieldinタンパク質の見かけの分子サイズは、約31kDaであり、これもよく一致していた。組換えyieldinタンパク質の臨界降伏張力調節活性を調べたところ、精製yieldinと同様の活性を有することがわかった。また、yieldinの発現は、黄化胚軸の伸長域に局在していることがノザン解析で確かめられた。
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