ある蛋白質が他の蛋白質と複合体を形成し、機能発現していることはよくある。生体内でCPC蛋白質が蛋白質複合体を形成しているかを検討した。シロイヌナズナ野生型の根では、CPC蛋白質の含量が非常に低く、生化学的解析が困難であることがわかったので、カリフラワーモザイクウィルスの35SプロモーターによってCPC蛋白質が過剰発現しているシロイヌナズナ形質転換体を用いて実験した。結果は以下の通りである。 1)CPC蛋白質は94アミノ酸から成る分子量約11万の比較的小さな蛋白質で、1次構造上可溶性だと予想されるにもかかわらず、非常に可溶化されにくかった。SDSのような強力な界面活性剤存在下でのみ、可溶化された。 2)架橋剤を用いた実験から、CPC蛋白質がそれ自体単独で存在するのではなく、高分子量体で存在することが示唆された。 3)架橋剤存在下で根のホモジェネートを調製し、そのホモジェネートから界面活性剤で抽出した架橋済み可溶性蛋白質画分をグリセロール密度勾配を用いた沈降速度遠心にかけて、蛋白質をその大きさ、各々に固有の沈降係数Sの違いにより分画した。その結果、CPC蛋白質がその単量体の分子量よりも大きな分子量のところに検出された。 以上の結果はCPC蛋白質が蛋白質複合体を形成していることを示唆した。 CPC蛋白質複合体を精製し、どのような蛋白質がCPC蛋白質と複合体を形成しているか調べるために、CPCヒスチジンタグ融合蛋白質が過剰発現しているシロイヌナズナ形質転換体を作製した。CPC蛋白質にヒスチジンタグが付いているので、アフィニティーカラムクロマトグラフィーにより、比較的容易にCPC蛋白質を植物体から分離精製することができる。同形質転換体で、CPCヒスチジンタグ融合蛋白質がCPC蛋白質としての機能を果たしていること、ヒスチジンタグのアフィニティーカラムクロマトグラフィーで簡単に濃縮できることを確認した。
|