植物組織中のシステインプロテアーゼ(CP)の活性制御機構の解明のために、これまで2種のシステインプロテアーゼインヒビター(シスタチン)タンパクと3種のCPcDNAの存在が確認されている食用ヒマワリをモデルに次のような研究を行なった。1)CPの大腸菌における発現:3種のヒマワリ由来CP(SCP1、2、5)のタンパク的性質を検討するために、SCPタンパクをpETベクター大腸菌BL21(DE3)を用いて発現した。その際に、N末端およびC末端プロ領域の役割を検討するために、その領域を含むような組み換え体も発現した。その結果、すべての場合で封入体として大腸菌内で発現されたので、グアニジン塩酸をもちいてタンパク質を可溶化し、透析法によって巻戻しを行ない、組み換えタンパク質を得た。2)SCPの諸性質:前項によって得た可溶化タンパク質の酵素活性について検討した。その結果、N末端側プロ領域を持たずに発現したものは、全く酵素活性を示さなかった.一方、N末端側プロ領域のみを持つ組み換え体のうちSCP1はpH4、40℃で30分間処理する事によってプロテアーゼ活性を示した。しかし、これにさらにC末端側のプロ領域を有するSCP1Cは全く酵素活性を示さなかった。よって植物CPのN末端側プロ領域はプロテアーゼの構造の巻戻しや活性化において重要な役割を果たしているのに対して、C末端側のプロ領域は巻戻しや活性化のどちらか、もしくはその両方を阻害するように機能していることが推察された。次に内性のシスタチンScaとScbのSCP1に対する阻害活性を検討した結果、SCPlはScaによって強く阻害された。このことから植物内でSCPlはScaにより強く活性の制御を受けていることが示唆された。現在、SCPの植物内局在性を検討するため、杭血清を作製中である。
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