研究概要 |
細胞内セカンドメッセンジャーとして知られるcGMPはその合成酵素であるグアニル酸シクラーゼ(GC)によって合成される。哺乳類において細胞膜貫通領域を持つ膜結合型GCはさらに、そのリガンドや存在部位から心房性ナトリウム利尿ホルモン受容体型(GC-A,GC-B)、耐熱性大腸菌毒素受容体型(GC-C)、嗅覚や視覚の感覚器官型(GC-D,GC-E,GC-F)の各分子種に分類されている。多くの組織において複数の分子種のGCが発現していることが報告されている。本研究は種々の動物門の動物の松果体に発現するGCの分子種を同定し、視覚器官と比較し、進化に伴い劇的に変化して来た松果体の機能の変化の道筋を明らかにする試みである。本年度は円口類のヤツメウナギ(Lampetra japonica)を用いて実験を行なってきた。ヤツメウナギ100個体分の松果体からRNAを抽出し、GCの保存領域から設計したプラマーを用いてRT-PCRを行ったが、未だいずれのタイプのGCの発現も確認できていない。それに対して、眼から抽出されたRNAからはGCの一部と推定される340残基の配列が増幅された。この配列をGenBankで検索したところ、ニワトリGC-Eと87%、ウシ及びイヌGC-Eと85%、ラットGC-Eと83%、マウスGC-Eと81%の相同性が認められた。それに対し、分類学上円口類により近い硬骨魚のメダカGC-Eとは80%の相同性が認められた。現在、このヤツメウナギから得られたGC-Eタイプのグアニル酸シクラーゼの全長の解読、及び松果体における発現の有無の検討を進めている。
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