植物の表層微小管は細胞膜に沿って存在し、新たに合成されるセルロースミクロフィブリルの方向を決定する。セルロースミクロフィブリルの方向は細胞の伸長方向を決定するため、表層微小管の配向は細胞の伸長方向を制御すると考えられる。表層微小管の構築機構を探るためには、表層微小管の重合、脱重合のメカニズムを知る必要があると考えられるが、重合、脱重合に関与するタンパク質の解析はほとんどされていない。γ-チューブリンは微小管のマイナス端に存在し、微小管の重合核になると考えられている。動物細胞ではγ-チューブリンは中心体に局在するが、植物の表層微小管においては明瞭な局在は示されていない。植物の表層微小管におけるγ-チューブリンの局在を明らかにすれば、表層微小管の構築機構の解明につながると考えられる。本研究では1本1本の表層微小管の端にγ-チューブリンが存在するか否かを検討した。 タバコγ-チューブリンcDNAの3'側の塩基配列を決定し、得られたγ-チューブリンC末端の推定アミノ酸配列を元に抗ペプチド抗体を作成した。タバコ培養細胞抽出液に対してウエスタンブロッティングを行った結果、作成した抗体は約55kDのタンパク質を認識したので、この抗体はタバコγ-チューブリンを認識すると考えられた。間期の細胞を蛍光抗体法により染色したところ、細胞表面、および細胞内部に細かい粒状の染色が見られた。タバコ培養細胞よりプロトプラストを作成し、プロトプラストゴースト(単離細胞表層)を得た。得られたゴーストを用い、蛍光抗体法で、抗α-チューブリンとの2重染色を行った結果、細胞染色で見られた粒の一部は表層微小管上に存在することがわかった。現在、電子顕微鏡レベルでのγ-チューブリンの局在を検討中である。
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