動物や酵母においては輸送小胞にはコートタンパク質の有無やコートタンパク質の種類により各種の輪送小胞が存在することが知られてその微細構造もよく記述されているが、これまで高等植物の輪送小胞の形態やそのアセンブリについてはまだあまりわかっていない。そこで今年度は植物表皮組織を用いて、極性輸送に関わる輸送小胞の形態解析を試みた。 高等植物の表皮細胞は外側tangential wall表面に分厚いクチクラ層が発達することから、表皮細胞にはクチクラ成分を極性的に輸送するシステムが存在すると考えられる。そこで、タマネギ子葉の表皮組織を高圧急速凍結法を用いて固定・凍結置換した後樹脂に包埋し、外側tangential wall直下の細胞質を含む250nmの厚さのtangential sectionを作製し、100kVの電子顕微鏡を用いて微細構造レベルでトモグラフィーを行い立体再構成した。その結果細胞膜直下にはcoated pitが多数存在することがわかり、またそれよりやや離れた部分では電子密度の高い内容物を含む小胞と思われる小胞が多数観察された。内側tangential wall側でのトモグラフィーは細胞壁の湾曲のため困難であることがわかったため、40nmの厚さの超薄横断連続切片を作製し、同一細胞の内側および外側tangential wallの直下の領域を観察し比較たところ、最も多く見られた小胞はトモグラフィーでも見られた電子密度の高い内容物を含む小胞であり、これはclathrin-coated vesicle(CCV)であることがわかった。両側で単位体積あたりのCCV数を数え比較したところ、予備的ではあるが、やや外側の方が多いという感触が得られた。
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