研究概要 |
グンバイヒルガオとナガミハマナタマメは1つの種が全世界の熱帯域に分布する汎熱帯海流散布植物である。このような分布パターンは漂着種子などの定性的なデータから、海流による種子散布によって生じ、維持されていると考えられてきた。しかし、実際に集団間にどれだけの遺伝的交流があるかを明らかにした研究は無い。そこで、本研究では、DNAマーカーを用いて集団間における遺伝的分化の程度を定裏し、分布域の成立と遺伝子交流の実体を明らかにする事を目的とした。 平成11年度は遺伝マーカーの開発を目的とし、葉緑体DNAからはtrnT-trnL,trnL-trn,psal-accDの3遺伝子間領域とtrnL,rpl116それぞれのイントロンを、核DNAからはrDNAのITS領域と、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(gapC),S-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼのゲノムDNA領域の塩基配列を決定した。メキシコの太平洋側、大西洋側それぞれから得られた2集団とフィリピンの2集団のグンバイヒルガオで上記遺伝子領域の塩基配列を比較したところ、葉緑体DNAには全く変異が見られなかった。核DNAではメキシコの集団とフィリピンの集団の間で、rDNAのITS領域とgapC遺伝子の3'側イントロン領域に変異が見られた。核DNAに見られた変異は、ITS領域700bp中に5つの塩基置換、gapC遺伝子イントロン領域に3つの塩基置換であった。フィリピンの集団間、メキシコの太平洋側と大西洋側の集団間では変異が見られなかった。
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