平成11年度は、ミヤコジシバリlxeris nakazonei(キク科)の推定母種であるハマニガナl.repensおよびオオジシバリl.debilisのそれぞれに特異的なDNAマーカーの探索を主目的とした。核DNAについては、全国19産地より採集したハマニガナ、および、20産地より採集したオオジシバリを用い、5SrDNAスペーサー領域のPCR-RFLP解析により種特異的マーカーの探索を試みたが、有効なマーカーを得ることができなかった。このため、現在、IGS領域(約4kb)のPCR-RFLP解析をおこなっている。ハマニガナとオオジシバリ各4産地の材料を用いて解析をおこなった結果、制限酵素Rsalによる処理により種特異的なRFLPパターンが得られた。今後さらにサンプル数を増やし、種特異的マーカーとして利用可能かどうかを確認する予定である。葉緑体DNAについては、rbcLとatpBの遺伝子間領域のPCR-RFLP解析により、ハマニガナとオオジシバリについて種特異的なマーカーを得ており、現在、この分子マーカーを用いてミヤコジシバリについての解析を進めている。沖縄県糸満市米須海岸に生育するミヤコジシバリの四倍体10個体、および、六倍体8個体について解析をおこなった結果、1)四倍体はハマニガナを母親としていること、2)六倍体のRFLPパターンはオオジシバリと一致すること、が明らかとなった。四倍体のミヤコジシバリはハマニガナを母親、オオジシバリを花粉親として生じた可能性が高いが、六倍体については、六倍体は雑種であり、これを通じてハマニガナとオオジシバリ間に浸透性交雑が生じているのか、あるいは、六倍体は特殊な生育環境におけるオオジシバリの形態変異であるのかの判断はできない。今後さらに個体数ならびに産地数を増やして解析を進めると共に、核DNAマーカーを用いた解析をおこなう必要がある。
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