研究概要 |
本研究では、霊長類のどのような3者が頻繁に三角形に位置して互いに身体接触させるかを記録し、3者のくっつきやすさに影響する要因を解析して、3個体に相性の起こるしくみを考察した。 チベットモンキーやニホンザルなどの霊長類は特に寒冷時の泊り場において暖をとるめに何頭かが互いに身体を接触させて「さるだんご」と呼ばれるかたまりをつくる。さるだんごの配置や日中の社会交渉における親密さから予想される各2者のくっつきやすさから、さるだんご内で各3者が三角形にくっつく期待値を算出して実測値と比較した。すなわち、2者のくっつきやすさの割に頻繁にくっついている3者と、逆に2者のくっつきやすさの割にはあまりくっついていない3者を洗い出した。その分析によって以下の結果を得て、著書(小川1999)及び論文((Ogawa,H.& Takahashi,H.Triadic positions of Tibetan monkeys in huddling at sleeping sites.投稿中)にまとめた。 (1)3者中の各2者の組み合わせがいずれもくっつきやすい3者ではくっつく頻度が多かった。それに対して、いずれかの組み合わせにくっつきにくい2者を含む3者ではくっつく頻度が少なかった。 (2)性別に分けると、交尾期にはおそらくメスを巡るオス間の競合のためにオスとオスの2者がくっつくことは少なくないにもかかわらず、オスーオスーメスのくっつき方は少なくなった。それに対して、出産期にはおそらくメスを巡るオス間の競合が低くなるために、オスーオスーメスのくっつき方が多くなった。 現在もニホンザルで更なる分析を継続中である。上記の発見は人間関係にも応用できる発想につながると期待される。うまく行っていない2者を含む複数個体内で円滑な人間関係を形成させて行くためのヒントを他の霊長類の社会交渉からどのように得るかは今後の課題である。
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