化合物半導体における0次元的量子閉じ込め構造を実現すると半導体レーザーは飛躍的にその特性を改善できることが明らかになってきた。しかし、化合物半導体量子ドットはそれを構成するドット自体が単一原子種ではなく化合物であり、またその量子ドットが形成される場所もヘテロ界面であることから、現在のシリコン半導体技術をしのぐ高度な制御が必須となる。原子レベルでの構造形成と自己組織化現象を人工的に誘導した配列制御を駆使しなければならないナノ構造形成技術を実現するためには厳密な理論に基づく原子レベルでの理論設計が望まれている。 昨年度は、結晶成長を支配する重要な部分のみを分子動力学法で計算し、その他の部分を粗視化して計算を行うことによって、飛躍的に演算量を削減することが可能な粗視化分子動力学計算プログラムDUNAL-MOMODYの開発に成功した。本年度は結晶成長における化学反応ダイナミックスを扱うことが可能な量子分子動力学計算プログラムに関しても粗視化による高速化計算を実現した。具体的には、結晶成長を支配する重要な部分のみを量子分子動力学法で計算し、その他の部分を古典分子動力学法で計算することで、数千倍以上の高速計算を実現した。本プログラムの開発によって、数十原子しか計算できなかった量子分子動力学法に対して、数百から数千原子の結晶成長シミュレーションを可能にした。さらに、本プログラムをMgO(001)面上のPd微粒子の結晶成長、MgO(001)面のホモエピタキシャル成長など様々な系に適用することに成功した。
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