高温超伝導体の電磁波放出の非線形光学効果による研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11750007
• 研究機関: 東京農工大学
• 研究代表者: 石橋 隆幸 東京農工大学, 工学部, 助手 (20272635)
• キーワード: 高温超伝導 / 電磁波 / 準粒子注入 / 強磁性体 / 微細加工 / トンネル接合

研究概要

本研究では、超伝導体からの電磁波の発生現象のメカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度は、高品質のビスマス系高温超伝導薄膜および高品質のビスマス系高温超伝導単結晶を用いて、非磁性金属および強磁性金属とのトンネル接合を形成し、準粒子を注入した場合の効果について研究を行った。
薄膜を用いた非磁性金属(金)/高温超伝導薄膜のトンネル接合においては、超伝導体への準粒子の注入による電磁波の発生の観測に成功した。この電磁波の発生は準粒子によるジョセフソンプラズマの励起によるものと考えられる。また、ビスマス系を用いることで、イットリウム系に比べ、約2倍の強度の電磁波が得られることがわかった。
また、超伝導の非平衡状態を効率よく作り出すことが期待される強磁性体を使ったトンネル接合の作製を行い、電気特性の評価を行った。強磁性金属のコバルトとビスマス系超伝導体の組み合わせのトンネル接合に関しては、本研究で初めて作製に成功した。そして、強磁性体からのスピン偏極した準粒子の注入による超伝導ギャップおよび金属/超伝導界面で起こるアンドレエフ反射の抑制効果が確認できた。
さらに、電磁波を効率よく発生させるこという観点から、周期構造を使った共振構造が期待されていが、高温超伝導体の微細加工技術はミクロンサイズまでと半導体に比べかなり遅れている。本研究では、周期構造作製の基礎技術として、パターン基板を使った微細パターンの作製の研究を行い、ビスマス系高温超伝導薄膜のサブミクロン構造の作製に初めて成功した。

研究成果

• [文献書誌] T.Ishibashi, T.Kawahara, H.Kaneko and K.Sato: "Submicron-Size Fabrication of BSCCO Thin Films by Using Patterned Substrates"IEEE transactions on Applied Superconductivity. 9. 2383-2386 (1999)
• [文献書誌] T.Kawahara, T.Ishibashi, H.Kaneko and K.Sato: "Intrinsic BSCCO Josephson Junctions on off-axis Substrates"IEEE transations on Applied Superconductivity. 9. 4519-4522 (1999)
• [文献書誌] T.Ishibashi, K.Sato, G.D.Gu, N.Koshizuka and K.Sato: "Tunneling Spectra of Co/I/BiSrCaCuO Tunnel Junctions"Jpn. J. Appl. Phys.. 印刷中. (2000)
• [文献書誌] K.Lee, W.Wang, I.Iguchi, B.Frideman, T.Ishibashi, and K.Sato: "Spin-polarized quasiparticle tunnel injection in a YBa2Cu3 Oy/Au/Co junction"Applied Physics Letter. 75. 1149-1151 (1999)
• [文献書誌] K.Lee, W.Wang, I.Iguchi, B.Frideman, T.Ishibashi, and K.Sato: "Nonequiliblium microwave emission due to tunnel injection of quasiparticles into a high-Tc Bi2Sr2CaCu2Oy superconductor"Physical Review B. 61. 689-693 (2000)
• [文献書誌] T.Ishibashi, K.Sato and K.Sato: "Anomalous Zero-bias Behavior in Co/BiSrCaCuO and Au/BiSrCaCuO Tunnel Junctions"Physica C. 印刷中. (2000)