昨年度の偏光赤外分光による結果で、V字型反転液晶の電場0Vの状態と電場を十分印加して強誘電相に電場誘起相転移させた状態での分子長軸の配向秩序がSmA相の場合と同様の高い秩序を示すことがわかった。そしてその解析の際、層構造の情報が必要、かつ重要であることがわかった。そこで当初の計画から少し進路変更して、放射光のX線ビームを使って三角波印加時の層構造の静的・時分割測定を行った。静的な測定では、V字型反転を示す液晶セルでは電場印加中に層はセル厚方向に「く」の字に折れ曲がったシェブロン構造を概ね保っており、反強誘電性液晶のような大きな層変形は起こっていないことがわかった。一方時分割測定を行い、詳細な解析を行った結果、交流電場が0Vを横切る付近でシェブロン構造を示す回折ビークの他に基板に垂直な方向に配向している層の成分があることが初めて検出できた。この結果から基本的にはシェブロン構造を保っているものの、印加電場に対し、協同的な分子の反転を行うため、折れ曲がり付近の層の不連続性をわずかな変形によって解消してるものと推測される。この結果を論文にまとめ、投稿、受理された。 時分割の赤外分光測定に関しては装置の改良が遅れ、未だ測定に至っていないが、電場0Vから徐々に直流を印加したときの偏光赤外分光測定は行うことができた。その結果、反転途中でも大きな2色比の偏光特性が得られ、静的ではあるが反転途中でも配向は一様でこれまでの推測通り分子は協調的に反転していることが直接確認できた。2月現在定量的な解析を進めている。
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