研究概要 |
本研究を進めてゆく過程において、縮小露光でX線の非対称反射を用いた場合、像変形の発生を示唆する報告のあることが明らかになった^<1)>。左記の報告は、像の縮小比における縦横の違いに注目し、不具合の原因として「分光器を含む光学素子の光軸上の位置関係(セッティング)」と「角度発散」とをあげている。しかし、「縦横比」よりもむしろ「像の歪み」に注目すると、文献には言及されていないものの、そこには非対称反射の原理的な問題(入射光の発散のみならず、分散と波動場の伝播)と、レジストの(材質に依存する)滲みが深く関係していることがわかる。 そこで、本研究では以上の原因をより明らかにし、歪みのない露光の縮小率を得るために、反射の原理的な評価とレジスト材の反応性評価を進めている。前者で重要なのは動力学的回折現象の理解であり、その応用に際して波動場の歪みを考察するために、酸化物結晶を用いて動力学的回折の原理的な研究が行われた^<2)>。一方、レジスト材としての高分子材料の反応も像の歪みに大きく影響するため、膜の明確に制御された条件を求めて単分子膜の形成と、膜内分子間相互作用、および光重合反応も評価している状況である^<3)>。現在なお解析中のデータが多いものの、以上の研究から、最近の低エミッタンス放射光源と狭いエネルギー幅を用いれば、歪みのない露光が期待されることが示唆される。 1)M,Morigami et al.:Photon Factory Activity Report 1989,p.241. 2)A.Saito et al.:Proceedings of the 9th international conference on production engineering 1999,p.787-791. 3)Y.Kuwahara,A.Saito,and M.Aono:生産と技術,Vol.51(4),1999,p.55.
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