本研究は、直径数ナノメートル程度のSiナノ結晶に、PやBをドーピングしナノメータースケールのpn接合を形成することを目的としている。本年度は、直径3〜4nm程度のSiナノ結晶にPをドーピングした場合の発光特性の変化について研究を行った。その結果、高濃度ドーピングを行うと、発光効率が急激に低下することが見出された。同時に、低エネルギー側に向かって単調に増加する光吸収が赤外領域に観測された。この光吸収は、自由電子吸収と考えられ、PドーピングによりSiナノ結晶中に自由電子が生成されたことを示している。自由電子が生成された結果、光により励起された電子-正孔対と、Pにより供給された電子の間でAuger再結合(非発光)が可能になり、発光効率が低下したと考えられる。本研究により、Pドーピングにより直径数nm程度のSiナノ結晶中に自由電子を生成することが可能であることがはじめて明らかになった。また、そのようなSiナノ結晶は、不純物をドープしないナノ結晶に比べて、発光効率が著しく低いことも明らかになった。 また本年度は、直径10nm程度と比較的大きいSiナノ結晶の作製もこころみた。直径10nm程度で高い発光効率を示す良質のSiナノ結晶の作製に関する報告は、これまでほとんど無かった。製膜条件と熱処理条件をチューニングすることにより、直径3〜4nmの粒子と同程度の発光効率を示す直径10nm程度のナノ結晶の作製に成功した。来年度は、このような大きいSiナノ結晶に、P、B及びそれらを同時ドーピングし、不純物ドーピングの影響をより詳細に調べるとともに、同時ドーピングによるpn接合の形成を目指す。
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