研究概要 |
本研究では,窒化物半導体薄膜中に内在されうる残留歪みの低減方法としてホウ素を窒化物半導体,特に窒化ガリウム(GaN)に含ませることにより,基板との格子整合を可能として高性能紫外半導体レーザの実験を目指すことを目的としている. 平成11年度はホウ素を含む窒化ガリウム,BGaNについてその結晶成長とBGaN系紫外半導体レーザの理論的検討を行った. まず,窒化アルミニウム(AlN)薄膜に対して交互供給バッファ層を用いるとAlN中の残留歪みが制御できることが判明し,残留歪み低減が窒化物半導体の結晶性向上に有効であることが分かった.この結果より,ホウ素を含めるGaNがデバイス応用上有効であることが示唆された.次に,有機金属気相成長法によりBGaN薄膜の結晶成長を試みた.この結果,ホウ素添加量1%程度のBGaN薄膜について低温フォトルミネッセンス測定の結果,エキシトン発光が観測される高品質な薄膜製作に成功した. また,BGaN系紫外半導体レーザ最適構造の理論検討については,まずBGaNの基本的な物性を明らかにする必要が生じる.そこで,禁制帯幅および有効質量について理論的に,また有機金属気相成長法により製作したBGaN薄膜の光学特性の測定結果より,検討を行った.この結果ホウ素を添加することによりBGaNの禁制帯幅は単調に増加し紫外発光デバイスへの応用が期待されることが分かった.また,有効質量はホウ素添加によりほとんど変わらないか,むしろ減少する傾向が見られた.これはBGaN薄膜の伝導制御を行う際に有利に働くのではないかと見ている.
|