研究概要 |
炭素ナノチューブは,直径が1nm〜20nmでかつ高アスペクト比のため走査型プローブ顕微鏡(SPM)の探針に最適である.本研究の目的は,炭素ナノチューブをSPMの探針へ応用するだけでなく、その表面をプラズマ等によって修飾し,特定の元素,分子または官能基をナノスケールで画像化できる探針の開発を目的とする.初年度は,炭素ナノチューブをSPMへ応用する際,高分解能を安定に得るための探針に要求される条件を確立する. 炭素ナノチューブは2つのナノマニピュレータを設けた走査型電子顕微鏡(SEM)チャンバー内にて市販のSPM探針へ取り付けた.SEM試料室内に残留するハイドロカーボンを原料とし,ナノチューブとSPM探針の接合部に,電子線を照射しミクロな領域の化学気相成長によりこれらを強固に固定した. ナノチューブの固定強度を,SEM内で直接観察し測定した.探針のベースとなるSiチップが破損するまでナノチューブは脱落せず十分な強度で固定することに成功した.さらに,ナノチューブの機械的特性を測定し横方向と縦方向から働く力に対して同様の力学定数で説明できることが明らかになった. このナノチューブSPM探針をDNAの像観察に用い,市販のベストデータに比べて約2倍の解像度を達成した.また,耐久性も高い. 一方,探針形状が高アスペクト比であることから,従来の探針ではあまり問題にならなかった,ナノチューブの側壁に働く横方向からの力で,SPM像が影響を受けることが明らかになった.この現象を先に測定したナノチューブのナノメカニクスと比較し,安定にSPM観察が出来る条件を明らかにした.
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