原子間力分光の実用化を目指して、Force Curve測定の高精度化を行うために、以下の二つのアプローチで研究を行った。 1.力平衡を実現するためのフォース・フィードバック系の安定制御を目指した理論的解析 フォースフィードバック系の安定には、カンチレバーのQ値およびバネ定数、制御器の遮断周波数とゲインが関与していることを明らかにした。中でも、Q値は材質によって決定されるため重要である。現在この結果を基に、系を安定化させるために必要な低いQ値を持った微細加工可能な高分子材料を用いてカンチレバーの最適形状設計を行っている。詳細は第61回応用物理学会学術講演会およびAPMF2001にて発表した。 2.コンタミネーション除去をねらった真空チェンバー内でのForce Curve測定 実際のForce Curve測定を真空内で行うためには、探針と試料の近接を遠隔操作で行う必要がある。そのための方法として3軸ピエゾ微動ステージでの振動駆動による試料の輸送について検討した。ステージに移動方向とある角度をなす正弦波を印加する事で試料の輸送を行うことに成功したが、満足な再現性を得ることができず、発表には至っていない。 今後の課題としては多数のフィードスルーを設けたことによるチェンバーの気密性の悪化を改善する必要がある。また、制御系のパラメータをチューニングする際にアナログ系では自由度に限界があるため高速なデジタル制御を導入する必要がある。
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