本研究は、サブ10フェムト秒パルスレーザー光の波長多様化を目指し、それに関する理論モデルの改善や極短パルスの第2高調波発生配置の考案及び基礎実験を行うものである。本研究では、誘電体多層膜ミラーと時間遅延結晶を用いた第2高調波発生という方式を提案し、従来の一枚非線形光学結晶にもう一枚時間遅延結晶を加えることによって、非線形光学結晶における群速度不整合を補正させる。また、誘電体多層膜ミラーで外部共振器型の波長変換器を構成し、フェムト秒レーザーパルスにおける群速度分散を抑制し、より高い変換効率の第2高調波を発生させる。平成11年度では、この研究の第一段階として、極短パルスレーザー光における第2高調波発生用光学系の最適な設計を行った。 (1)非線形波動方程式を用い、高次群速度分散、 walk-off効果、高次非線形光学効果を考慮したうえで、フェムト秒パルスレーザー光の第2高調波発生に関する数値計算を行った。理論的解析により、高調波発生の過程における周波数の逆変換を超短パルスレーザー光の時間的波形制御に応用することは可能である。 KDP結晶を用いた場合は、1μmの中心波長において、0.5〜1.0psから0.1〜0.2psまでのパルス圧縮と0.1psオーダーのパルス列の発生が可能であることは明らかになった。 (2)非平行の第2高調波発生における周波数チャープの補正に関する光学系の設計も行った。理論及び設計の結果により、光学系に使われる分散素子の空間位置を適切に設計すると、入射基本波における周波数チャープを補正できることを分かった。また、入射基本波の入射方向を最適化することによって、第2高調波におけるパルス圧縮も可能であることは分かった。
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