研究概要 |
非線形光学効果であるコヒーレントアンチストークスラマン散乱を用いた光学顕微鏡(CARS顕微鏡)の結像特性理論について詳細に検討し,結像特性を定式化した.検出器側にピンホールを配置しなくても,非線形光学効果によって3次元分解能を持つことを示し,検出器側ピンホールの効果について詳細に検討した.ピンホールを除いた場合,ピンホールを配置した時と比べてどの程度3次元分解能が悪化するのか,励起側および観測側の対物レンズの開口数を変えて3次元分解能を数値計算し比較した.この結果,観測側の対物レンズの開口数が励起側の対物レンズの開口数と同じかより小さい場合には,CARS顕微鏡の3次元分解能は,ピンホールを配置しなくてもほとんど変化しないことが分かった(一部,分光研究,40,51-61(2000)にて発表). 励起光源にナノ秒YAGレーザと色素レーザを用いた装置を開発し奥行き方向の分解能で1.82ミクロンが達成された,さらに励起光源にチタンサファイアモードロックレーザと光学的パラメトリック増幅器を用いた指紋領域(Raman Shift 800-1700 cm^<-1>)で観測が可能なシステムを開発し,直径1ミクロンのポリスチレンビーズの指紋領域(約1000cm^<-1>のラマンシフト)でのCARS像を得ることに成功した(Optics Letters,25,1768-1770(2000)にて発表). また,マイクロレンズアレイを用いた多焦点CARS顕微鏡システムを開発し,観測時間の大幅な向上(従来のステージスキャンに比べて100倍)を達成し,CARSスペクトル画像により物質の選別が可能となった.
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