本研究では、新紫外レーザー媒質を用いた全固体波長可変レーザーシステムからの超短パルスの直接発生と大出力化を目的とする。特に、共同研究者である東北大学福田教授とロシア共和国ダビンスキイ教授が最近育成した世界最大級の紫外固体レーザー媒質を用いて、レーザーシステムの再デザインを行ない、パルスエネルギーの大出力化を試みる具体的には、先に自己注入同期による疑似モード同期法で実証したQ値の低い短発振器(パルス注入発振器)を、大型Ce:LiCAF結晶等に適応し、さらに短パルス励起を組み合わせることにより1ピコ秒台の短パルスを発生し、加えて共焦点多重光路増幅光学系の構築によりサブTWレベルの増幅を実現する。 紫外領域の波長可変固体レーザーの広い利得帯域は、赤外領域のチタンサファイアレーザーと同様に、超短光パルスの増幅・発生への応用が期待される。しかし、新紫外レーザー媒質においては、結晶成長技術が工学的に未成熟なため高品位な結晶の安定供給は難しく、偶然にできた良質な結晶を頼りに実験を行われてきた。そのため、基礎レーザー特性の評価以外はあまり進歩がなかった。事実、新紫外波長可変レーザー結晶による超短パルス光源の研究は、申請者ら(レーザーデバイス研究担当)とダビンスキ教授ら(結晶育成担当)の共同研究グループからのみ研究発表が行われているが現状である。しかるに本研究に対する期待は世界的に大きく、新レーザー媒質の超短パルスレーザー応用を左右する研究と位置づけられる。さらに、この様な基礎研究レベルでの新紫外レーザー結晶の応用上の有用性が確認されれば、結晶育成の問題解決の研究の大きな動機づけを行える。
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