研究概要 |
本研究では,拡張された半マルチンゲールが駆動する確率システムの挙動解析に対する効率的シミュレーション解法の開発とその実用的応用について考察を行い,以下のような結果を得た。 1.マルチンゲール変換理論において広く知られているGirsanov-Meyerの定理を活用することにより,複合ポアソン過程が駆動する確率システムの挙動解析の効率化に結びつく確率測度変換の導出に成功した。またそれに基づいて,そのようなシステムの解過程の初到達問題等の実用上重要な問題に対する重点サンプリングシミュレーションスキームの開発を行った。この結果,申請者の過去の研究における成果(ウィーナー過程が駆動するシステムに対する重点サンプリングスキームの開発)を組み入れることにより,より一般的なLevy過程が駆動する確率システムの解析に対して有効となると期待できる確率測度変換およびそれに対応した重点サンプリングシミュレーションスキームの構築が可能であることが明らかになった。 2.評価対象が初到達確率となる場合を中心に確率測度の最適な変換法について考察を行い,重点サンプリングシミュレーション下で約5割のサンプルが到達集合に到達すること,および測度変換におけるRadon-Nikodymの導関数の分散が最小となること,の2点がシミュレーションを効率化する上で重要となることを見いだした。また,いくつかの数値例を通じて,本研究での提案スキームにより極めて微小な初到達確率を非常に精度よく推定できることを検証した。このことは例えば重要システムの信頼性解析において極めて意義深いことであると考えられる。 3.確率的疲労き裂成長モデルや,金融理論と保険理論の融合モデル等に構築したスキームを具体的に適用し,それが有効であることを確認した。
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