研究概要 |
本年度は,生産工場でしばしば見られる直線状経路の搬送スケジューリングについて,それを「解く」という実用的観点から問題の性質を解析した.まず,部分問題の定義と下界値の導出を行った.これらは,すでに得られていたもとの問題に対する結果から,容易に導かれた.次に,初期暫定値を得るための近似解法について検討した.これについては,性能比保証をもつ多項式時間近似解法が構築できる.平均的な性能にはさほど影響はないと予想されるものの,この解法の最悪ケース性能比の解析には,無人搬送車の初期位置の条件を考慮する必要のあることがわかった.さらに,納期制約を持つ問題に対しては,ダイクストラ木を利用した近似解法を構築した.加工スケジューリング問題に対しては,一機械問題の結果に基づいたいくつかのディスパッチングルールが検討されたりしているが,搬送スケジューリング問題ではそれらを直接適用すると,経路に関する情報が全く利用できないという欠点があった.本研究で構築した近似解法は,ダイクストラ木を導入したことにより,経路上の移動時間の情報をある程度考慮に入れることができ,このことは数値実験によって確かめられた.さらに,この解法は,ダイクストラ木を用いているという性格上,木状経路の搬送スケジューリングに対しても有効ではないかと考えられ,来年度の検討課題には,厳密解法の実現に,これも加えたい. これらに関連して,搬送システムと工作機械の動きを同時に考慮した2機械ロポティクセル・スケジユーリングの問題,ならびに,ハイブリッド型フローショップ・スケジューリングの問題を扱った.有用な近似解法を提案するとともに,数値実験によって,システム最適化に対する搬送の影響を確認することができた.
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