研究概要 |
悪条件線形方程式は主に画像復元問題などの逆問題を解くときに現れる。通常,悪条件線形方程式はその係数行列を特異値分解を用いて分解し,Tikhonovに代表される正則化手法を適用することにより解かれる。しかし,問題が大規模になると特異値分解は計算量が多大なため解く事が困難となる。これは特異値分解が行列の固有値問題を利用して計算されるためである。行列の固有値は一般に有限回の演算では求めることはできない。そのため反復計算が必要となる。これに対して我々は直接解法つまり有限回の演算で行列の分解を行うことができるQR分解を用いた方法を開発した.この方法を用いると特異値分解よりも高速に係数行列を分解できることがさまざまな問題において確認された.また,この手法をTikhonovのような正則化手法に応用することにも成功した.これにより画像復元問題などの逆問題がこれまでよりも高速になおかつ安定に解けることがわかった。 今年度は我々の開発した方法の理論的な裏づけについての研究を中心に行った.これにより本方法は従来のTikhonovの正則化法と同様に極限において元の線形方程式の最小二乗最小ノルム解に収束することがわかった。また,典型的な悪条件問題である第1種Fredholm型積分方程式に対して数値実験を行った結果,従来の正則化法と同程度の近時解が得られることが確認された 来年度はより実用的な問題に適用し,我々の方法の有効性・有用性を検証する予定である。
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