本年度は、まず超離散系の代数に適した計算技法の構築のための理論的考察を行った。まず超離散系の中で、最も典型的な可積分系である箱と球の系に注目し、その代数構造を詳細に調べることにした。それには箱と球の系の自由度をどこまで増せるか、つまりどこまで広いクラスに拡張できるかを検証する必要がある。その結果、今まで得られていた箱と球の系をすべて含む「番号付き箱と球の系」がKP hierarchyと呼ばれる可積分ソリトン方程式系に対応し、またその解がある解の極限として得られることを具体的に示した。これらを求める際に、Max-Plus代数に適した計算機システムと数式処理のソフトウェアシステムの構築を行い、詳細な計算機シミュレーション、数式処理計算を行うことによって、その解の超離散化に成功した。計算機シミュレーション、数式処理用マシンとしては、PentiumIII750MHzを2基搭載したワークステーションを新たに購入し、その上にシステムを構築した。 この成果は、論文"Box and ball system as a realization of ultradiscrete nonautonomous KP equation"として公表した。
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