研究概要 |
比較的小型で高繰り返し(>1Hz)動作が可能となる新しい励起方式の軟X線レーザーの提案を行い、数値計算および実験を行った。提案した方式は差動排気セルに同一軸上にピンホールを二つ取付け、この中に満たしたKrガス中にピンホールと同軸に集光した1ピコ秒,500mJのガラスレーザーパルスを照射し、高強度光電離および逆制動放射吸収を利用して利得発生に適した高温高密度プラズマを生成し32.8nmで高利得を得るというものである。数値計算では既存の原子コードを利用して利得の計算に必要な各種のレートを計算し、実験条件に則したパラメータでの利得計算を行った。その結果、原子数密度7×10^<18>cm^<-3>のKrガス中に1ピコ秒のガラスレーザーパルス(0.5J)を2×10^<16>W/cm^2で集光したときにNi様Kr(Kr^<8+>)イオンの4d-4p遷移(32.8nm)において1200cm^<-1>という極めて高い利得の発生することを数値計算により示した。またレーザーパルスを強度を保持した状態で 3mm伝搬させることによって10^<-5>を超える高いエネルギー変換効率が望めることを示した。これらは軸方向進行波励起を用いることによって軟X線レーザーの励起に必要なエネルギーが1桁近く低減できることを示す成果である。実験においては1.5ps,1.5Jのガラスレーザーシステムを構築し、差動排気セル中のKrガスとの相互作用を観測した。その結果、Krの原子数密度が1.2×10^<18>cm^<-3>程度まではレーザー強度が高利得の発生に必要となる2×10^<16>W/cm^2を超え、32.8nmのラインおよび下準位11.5nmの遷移なども観測された。しかし、もう一つの高利得の条件である原子数密度の8×10^<18>cm^<-3>の領域ではレーザーパルス自身が作り出すプラズマの電子数密度勾配によりレーザーパルスが屈折し必要な強度が得られないことを示した。
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