実用に供されている構造要素の残存強度や予寿命を予測し有効利用するためには、実存のき裂や欠陥の非破壊評価技術が必要不可欠であるが、特に表面き裂の非破壊評価技術の開発は重要である。本研究では超音波表面波による表面き裂の非破壊評価法に着目し、ウェーブレット変換による超音波表面波形データ解析により表面き裂の寸法・形状を検出するとともに、検出した情報に基づいて表面き裂を可視化するシステムを構築することを目的としている。 本年度の研究実績を要約すれば次のとおりである。 1.従来の表面波探触子は各種の材料表面を伝播する表面波を励起・検出するには性能・効率が不十分であったため、表面波を励起・検出するための新しい超音波探触子を開発した。 2.超音波試験によって測定される表面波波形データから表面き裂の寸法・形状の検出に有効な情報を抽出するために、ウェーブレット解析を行うソフトウェアを開発した。 3.表面き裂のない平滑材およびコーティング材の超音波試験を実施し、本研究において開発した探触子の実用性を示すとともに、表面波波形データのウェーブレット解析の有効性を実証した。 4.疲労負荷により所定の寸法の表面き裂を試験片に導入するための方法を検討し、有効な方法を確立した。 今後は、まず、表面き裂を導入した試験片に対する超音波試験を実施し、表面き裂の寸法・形状に関する情報が的確に抽出できるかどうかを検討する予定である。
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