研究概要 |
人工股関節の最適設計に必要とされる変形股関節症の関節周辺における力学的な負荷条件や骨代謝の状況を把握するため,関節部の3次元形状や骨密度分布等をCT画像やX線写真から求め定量化する方法を確立した.また,そこで得られる定量化された骨密度分布を有限要素法による力学解析モデルに反映させるための手法についてもあわせて開発を行った.具体的には,CT画像上の各点における濃淡値を全ての断面より画像処理ソフトウエアを用いて求め,大腿骨各部の位置と濃淡値の対応関係を求める.また,実物の骨組織との比較により,画像上の濃淡値と骨密度の関係を求めておくことで,大腿骨上の任意の点における骨密度が明らかとなる.ここで得られた骨密度分布を用いて,大腿骨の形大データより予め作成しておいた有限要素モデルの各要素重心点における骨密度を求め,各要素の力学的特性値に変換して利用する.この手法により,人工股関節の最適設計を行う上で必要不可欠な実際の骨密度分布を正確に反映した力学モデルを得ることができる.実際の変形性股関節患者より撮影したCT画像を対象に,本手法を用いて有限要素モデルを作成し,その有効性を確認した.さらに,この大腿骨の有限要素モデルを用いて,大腿骨近位部の髄空形状に沿うように形状設計された人工股関節ステムを挿入したモデルを作成し,周囲の骨に作用する応力を解析した.これらの解析を髄空形状の異なる大腿骨に対しても同様に行い,その影響を比較検討した.その結果,髄空形状が異なるような大腿骨についても,その髄空形状に合わせて人工股関節ステムを設計することで,ほぼ同様な応力分布力略が得られることが明らかとなった.今年度の研究によって得られた知見と方法を利用することにより,人工股関節周囲でのゆるみや骨折が最も発生し難いように人工股関節の寸法や形状を最適化するコンピュータプログラムの開発が可能と考えられる.
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