研究概要 |
1.冷間圧延された膜厚30,50,100μmの純銅膜納入材の結晶粒形状を観察し,薄い膜材ほど圧延によって結晶粒が圧延方向に延ばされ,膜厚方向につぶされて扁平化していることが分かった.これらの膜材を用いて,負荷方向が圧延方向と平行な場合と直角な場合の二通りの疲労試験を行った結果,負荷方向が圧延方向と直角な場合の方が,疲労寿命が減少し,疲労限度が低下することが分かった.この圧延方向の影響は膜厚の薄い材料ほど顕著に現れた.また,膜厚が薄い試験片ほど疲労限度が低下し,疲労寿命に対する膜厚効果が明らかになった. 2.上述の冷間圧延銅膜材のうち,膜厚30,100μmの膜材については,腹中央部に開けた貫通切欠き穴から発生するき裂を,走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)内で詳細に観察した.その結果,膜厚30μmの膜材は,負荷方向が圧延方向と平行な場合と直角な場合とで,き裂の伝ぱ形態に明瞭な相違が観察された.特に,負荷方向が圧延方向と直角な場合のき裂は,き裂周辺にほとんどすべりが見られず,直線的にき裂が伝ぱしていた.これに対して膜厚100μmの膜材では,負荷方向が圧延方向と平行な場合と直角な場合とで,き裂の形態に明瞭な違いは見られず,いずれもき裂周辺にすべりが多く観察され,屈曲を伴いながらき裂が伝ぱしていた. 3.上述の冷間圧延銅膜材のうち、膜厚30μmの膜材については,膜中央部に開けた貫通切欠きからの疲労き裂発生挙動を,膜表面および断面方向からSEMを用いて観察した.その結果,膜断面方向に伝ぱするき裂についても,膜表面の場合と同様に,負荷方向が圧延方向に平行な場合の方が,直角な場合よりもき裂が屈曲しながら伝ぱしていることがわかった.またいずれも場合も,膜表面で発生したき裂は,膜厚方向にき裂が貫通するまではき裂伝ぱ速度は低く,膜厚方向貫通後に急速にき裂伝ぱ速度が増加することがわかった.
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