研究概要 |
固体が温度変化を受けると,生じた熱応力によって表面近くの傷などからき裂が進展し,その結果固体が割断されることがある.この現象が加工に利用できれば,工具を使用する従来工法に比べ強じんで清浄な割断面が得られることから,セラミックやシリコンウエハ等のぜい性固体の整形に関する実用化が期待されている.この方法では,温度分布の与え方により生成される割断面の形状が変化するため,所望の割断形状を得るために加熱源強度や加熱位置・範囲などを適切に制御せねばならない.工業的には高い直線性の線割断が要求されるが,例えば有限幅板を縁と平行に線加熱すると,生じる割断面には一般に湾曲が生じる. そこで本研究では,線加熱をうける矩形薄板中のき裂がいかなる経路をたどって進展するかについて破壊力学に基づくき裂伝ぱ経路のシミュレーションを行い,割断線湾曲のメカニズムを明らかにした.また,加熱源の形状とき裂先端に生じる熱応力拡大係数の相関を解析し,材料に生じる熱的ダメージを最小にし,かつ最大の割断効率が得られる最適加熱位置と加熱形状とを遺伝的アルゴリズムを用いて求めた.矩形薄板内において,き裂を縁と平行に進展させるには,レーザ等によるき裂先端近旁の局所加熱と,圧縮空気の吹付けによる冷却とを併用することが効果的であるとの実験結果を受け,き裂を直線的に進展させるための加熱条件について冷却の効果を含めて数値逆解析をすすめている.また,比較的厚いぜい性固体のブロックに対し,厚み方向に指定した深さのスクライビングを生じさせるための加熱条件についても数値的な検討を行っている.
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