本研究は、水の臨界点を超える高温高圧環境下における地熱発電システムの開発の基礎となる、水圧破砕技術により造成される貯留層形成プロセスの解明を目的とする。 平成11年度は、小型岩石試験片を用いたすべり変形に伴なう裂開口挙動の測定とき裂要素を用いた有限要素解析プログラムの開発を行なった。 小型試験片を用いたせん断すべり実験は、花崗岩よりなる試験片にあらかじめき裂を作成し、このき裂面上のすべり変形に伴なうき裂開口変位を計測した。その結果、き裂開口挙動は、初期にはせん断すべりに伴なうき裂の凸凹の乗り上げによりすべり量の増大とともに増加するが、その後、一定となり、その最大の開口量は平均結晶粒径の1/10程度であり乗り上げ角度は約20度となることがわかった。さらに、実験の前後で破面形状を測定した結果、せん断すべり前後の破面形状のフラクタル次元に強い相関があることを見い出した。 実験と並行して、岩石の破壊モデルを組み込んだ有限要素解析プログラムを開発した。破壊モデルは、破壊基準として引張側の破壊基準に修正を加えたクーロンモール型の破壊関数を用いることとした。この破壊関数にき裂進展モデルとして結合力モデルを適用し、破壊の進行に伴なう軟化挙動を模擬する。計算において、き裂は進展に伴なって屈曲することが予想されるため、き裂要素と呼ばれる要素内にき裂を埋め込む特殊な要素を用いてき裂を模擬することとした。以上のモデルを有限要素解析に組み込み、基礎的な計算を行なった。その結果、本解析プログラムを用いて、地下環境下における水圧破砕き裂進展挙動を予測することが可能であることを示した。 次年度は、本解析プログラムの細部に改良を加えて、水圧破砕き裂進展挙動を系統的に調査する計画である。
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