研究概要 |
実績概要 本研究では、延性モード楕円振動切削と呼ぶ新たな加工方法によって、硬脆材料の延性モードでの超精密切削を実現し、加工精度と加工能率を両立し得る新たな実用的超精密加工技術を開発することを目指して研究を行った。本年度は、前年度に引き続いて基礎的な溝加工実験を行い、さらにその成果を踏まえて平面加工を試み、下記の成果を得た。 1.安定した任意の楕円振動軌跡が得られる工具振動システムの開発 すでに開発している超音波楕円振動工具では、2方向に同一周波数で位相差を持つ共振を励起して楕円振動を得ているが、2方向の振動の干渉が大きいため、所望の楕円軌跡を得ることが容易ではない。そこで、高速回転体の制御において用いられるクロス制御の手法を応用して干渉を除去し、安定した任意の楕円振動軌跡を得ることのできる制御システムを構築した。開発したシステムでは、機械的共振周波数を自動的に追尾する制御,2方向の振幅を目標値に保つ制御,および2方向の振動の間の位相差を目標値に保つ制御を同時に行うことができる。 2.旋削加工への適用と開発した工具振動システムの有用性の検証 上記の工具振動システムの各制御ゲインの調整を行い、本システムによって安定化した楕円振動によって切削実験を行った。ここでは、代表的な3次元切削加工である旋削加工を行った。その結果、安定化しない従来のシステムに比べて、大幅に形状精度、仕上げ面粗さを向上し得ることを確認した。 3.加工条件に関する検討 まず、切削油剤の供給方法について検討を行った。切削油剤を塗布する方法、ミスト状にして供給する方法、および乾式の切削を比較した結果、ミスト状にして供給した場合に最も良い仕上げ面粗さが得られることを確認した。 4.実用的な諸効果の検討 本手法によって期待される実用的な諸効果すなわち加工精度の向上、加工変質層やばりの低減、びびり振動の抑制、被削材の工具への凝着の抑制、工具摩耗の減少などについて確認を行った。 5.楕円振動エンドミル加工装置の試作(回転工具への適用) 実用的には、旋削加工のみならず、エンドミル加工、ドリル加工などの回転工具による加工に適用することが望まれる。そこで、円振動装置を回転軸の中に組み込み、楕円振動切削加工法を適用したNCフライス盤を開発した。基礎実験の結果、超精密旋盤上での実験と同様に切削力が大幅に低減することを確認した。
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