研究概要 |
平成11年度の研究計画においては,シリコンインゴットのスライシング加工法の1つとして利用されているマルチワイヤソー方式において使用されているスラリーのベースオイルが加工特性に及ぼす影響,スラリー中の砥粒径を変化させたときの影響,砥粒濃度の変化によるスラリーの粘度特性を明らかにすると共に,工作物上昇方式マルチワイヤソーを用いてスラリー組成が加工能率や加工精度の与える影響を明らかにすることを予定としていた.本年度の研究成果によりスラリー組成を変化させた時のスラリー特性を実験とレオロジー的視点から理論解析を行い,実機による切断性能試験を行った結果,次に述べる事柄が明らかとなった. 1.砥粒濃度が55%wtの条件下において,粒度の異なる3種類の砥粒(GC♯600,GC♯800,GC♯2000)を任意に混合させた場合,加工能率は砥流の混合比が2:1:1の時,GC♯600を単独で用いる場合よりも向上した. 2.スラリー中の砥粒濃度を変化させると,ある砥粒濃度で最高加工能率を示した.また,粘度の異なるベースオイルを用いた場合,ベースオイル粘度の相違によって,最高加工能率を示す砥粒濃度はそれぞれ変化した. 3.3種類の砥粒を混同させたスラリーを用いた場合,ウェハー厚さやウェハー表面粗さ等の加工精度を向上させ,加工エッジ部で生じるチッピングはスラリー中の最も粒径が大きいGC♯600にのみ依存することが明らかとなった. 4.粒径の異なる砥粒を混合させたときの加工メカニズムはGC♯600より粒径の小さい砥粒の転動抑制効果によるGC♯600砥粒の引掻き効果の向上に起因していることが明らかとなった.
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