研究概要 |
ELID(electrolytic in process dressing)研削とは、高効率な超精密加工が可能な新たな研削加工法であり,ELID研究会を中心に国内外の企業に普及してきている。このような表面加工技術の多様化・高度化に伴い,トライボロジー分野では表面加工条件のトライボロジー特性に及ぼす影響を把握しておくことが必要になってきている。一方,平面加工分野では加工面の評価は主に表面粗さ,平面度のみでなされることが多い。セラミックス系材料のトライボロジー特性は表面性状に敏感であることから,本研究では加工面の詳価の一つにトライボロジー試験を行うことの有効性も検討する。以上より本年度は,研削条件を変化させELID研削により仕上げられた各種硬質被膜材料のトライボロジー特性に及ぼす影響を初めて明らかにすることを研究の目的とした。 本研究において,研削にはELID装置を搭載した横形精密ロータリ平面研削盤,片面ラップ盤及び立形ロータリ平面研削盤を用いて,#400〜#8000の幅広い粒度の砥石を使用し,電解条件等の各種研削加工条件を変化させ,炭化ケイ素被膜材料,酸化クロム被膜材料,アルミナ被膜及びダイヤモンド被膜の鏡面研削を行った。種々の条件下でELID研削加工が行われた各種被膜材料に対し,摩擦条件を変化させ,摩耗試験を行い,以下の知見を明らかにした;1.ELID研削を施した炭化ケイ素被膜材料,酸化クロム被膜材料,アルミナ被膜材料について,低摩擦,低摩耗を表す臨界条件を示し,臨界条件以下では摺動特性に優れる。2.通常の研削仕上げ面における微視的摩耗形態はパウダー形成型が支配的であるが,ELID研削を施した場合の摩耗形態は,ヘルツ最大接触圧力の増加に伴い,パウダー形成型が生じない場合からパウダー形成型の摩耗形態に遷移する。3.パウダー形成型の摩耗形態の発生条件は,無次元パラメータを用いて分類できる。
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