研究概要 |
1.ソノルミネッセンス実験装置の確立 実験装置としては両端に超音波振動子を取りつけたアクリルビーカーを作成し,パルスジェネレーターから発信された電圧信号を高周波アンプを介して増幅して振動子を駆動させることで,定在波の腹に単一の気泡をトラップさせることに成功した.印加電圧と駆動周波数を変えることにより,単泡性から多泡性までのソノルミネッセンスを観測することができる.理論解析により実験装置の共振周波数を理論的に導出し,計上した超音波音圧計により駆動周波数に対する定在波中の音圧の依存性を計測することで,理論の妥当性を確認した.さらに,駆動周波数と印加電圧におけるソノルミネッセンスの発生範囲を目視とCCDカメラにより計測するとともに,分光器と光電子増倍管によりソノルミネッセンスのスペクトルを計測することで,多泡性および単泡性ソノルミネッセンスの差異は定在波中の気泡の空間的な安定性と,他の気泡との干渉に支配的な要因があることが推測された. 2.分子レベルでの気泡モデルの構築 気泡を連続体として扱った従来の計算モデルと異なり,気泡内部を分子レベルで扱い,境界条件は連続体の方程式にしたがって決定するモデルを開発した.このモデルにより,連続体モデルでは解明できなかった気泡内部の砲撃波の伝播や非平衡状態を計上したパーソナルコンピュータによりシミュレートすることを可能にした.しかしながら,系全体を断熱状態としているため,気泡内の圧力や温度は実験結果と定量的な一致が見られない.そこで現在,水分子の凝縮と蒸発を含んだモデルに改良中である.さらに,最新の理論ではイオン状態の希ガスが支配的なまでの要因であると考えられていることから,イオン状態を模擬したモデルに改良し,実験結果で得られている特性を再現する.
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