研究概要 |
壁乱流からの放射音特性と音源について評価するために,すでに構築した音場と流れ場を分離した直接解法の高精度化をすすめた.高精度化にあたり,空間の離散化に8次精度のコンパクトスキームを時間進行には4次のルンゲクッタ法を採用した.また,遠方の放射条件としてPML法を取り入れた.その結果,従来の低次スキームでは捉えられなかった壁近傍での微細流動現象に起因する音場構造が再現され,高解像度のデータベースが構築されたことを確認した.壁乱流の音源構造について調べると,音源は微細渦が集中した渦郡領域で強く現れ,壁遠方場ではこれら音源構造からの放射音が複雑に干渉した結果,比較的大規模な音場構造が形成されること,特に強い音場構造の生成消滅は微細渦の場合と比べ極めて短い時間スケール起こることなど,広帯域騒音の構造的な特徴が明らかにされた.騒音低減のための柔軟壁効果を検討するため,2次元空洞流れからの放射音について計算を行った.ここでは柔軟壁特性を模擬するための抵抗要素を空洞壁に配置し,抵抗要素の強度と位相遅れを変化させ遠方場での音の低減率を調べた.その結果,壁での抵抗要素の強度には最適値があり,十分な音圧の低減が図られることを示した.壁の変形速度は十分に小さく,流れ場では柔軟壁効果を考慮する必要がないことも明らかにした.遷音速速領域の境界層からの放射音の音源について検討するため,壁近傍に一対の微細渦構造を配置し,その発達を調べた.遷音速域の3種類のマッハ数(0.1,0.5,0.8)について検討した結果,マッハ数の増大に依存して,密度変動による速度場の発散が微細渦中心部で強くなり,特に壁から離れた位置での微細渦の成長が抑制されることがわかった.一方,壁のごく近傍での渦の形成は比較的維持されることから,壁遠方では密度変動に伴う音の発生が優位になる可能性を示唆する結果が得られた.
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