人や犬などの大動脈の血流は乱流に遷移することが知られており、乱流への遷移は血管壁に対する影響などが多いと考えられてきた。そこで、モデル流路内に振動流を発生させ乱流遷移の検討を行ってきた。モデル実験の結果によると、周期的な変動を伴う振動流の乱流では、周期毎にほぼ同位相において乱流への遷移現象が発生する。この時管断面内での遷移位相の違いを観察すると、壁近傍(ストークス層内部)でわずかに速い位相で乱流へと遷移するが、他の管断面内の領域では同時に乱流へと遷移するという非常に特徴的な現象が観察される。この遷移の位相における剪断応力の増大は、大動脈内においての乱流の遷移が血球、血管に対する影響の大きいことを示唆するものと考えられる。また、周期毎にほぼ同位相において遷移現象が発生することは、ある種の流れの安定性を示唆する可能性があると考えている。 しかし、熱線流速計では乱流場のなかの1点(ないし数点)でしか同時計測ができず、乱流遷移などの構造を詳細に知る上では限界があった。本年度は上記のような実験的に結果の得られている振動流に発生する乱流を直接数値シュミュレーション(DNS)を用いることで現象の理解を深めることが出来ないかを探ってきた。計算資源との兼ね合いで現在のところ2次元のメッシュ上での流れではあるが、実際の乱流に似た周期的に乱流の発生・発達・減衰・消滅が繰り返すという結果が得られた。この手法の妥当性をさらに検討し、様々な周期的な流れ場での乱流遷移を検討している。
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