本研究では、高温と高圧の雰囲気での噴霧挙動を研究対象と予定したため高温高背圧場観察用に、4方向光学研磨石英ガラス製観察窓付の圧力容器を設計し試作した。撮影はシュリーレン法を用いて、デジタルカメラによって行った。燃料噴射時期とストロボ光源の光とを同期させるため、パルスコントローラを試作した。これによって、ストロボ光源の閃光を最短20nsまで短時間化でき、鮮明な画像を得ることを可能にした。実験は、純DME(ジメチルエーテル)および軽油の噴霧初期段階の挙動に的を絞っており、そのため、噴射開始直後から0.1ms間隔で撮影した。噴射弁開弁圧力は、DMEが8.83MPa、軽油が19.62MPaに設定した。噴射圧力を変化させるため、ポンプの回転数を480、960、2000rpmを変化させた。本研究は、当初の高温高圧雰囲気を実現できないものの、低沸点燃料の噴霧初期の挙動について、次の見知を得た。 1.低回転において、噴霧到達距離は軽油とほぼ同等で、体積は2倍以上大きい。この時のDMEの噴射率が軽油の70%しかないことを考慮すると、常温常圧の時、DMEの噴霧は軽油より3倍の蒸発(または微粒化)能力を有することを示している。 2.高回転において、DMEの噴射率は軽油の半分になるにもかかわらず、噴霧到達距離は軽油よりわずかに短く、体積はほぼ同等である。これもDMEの噴霧は軽油より蒸発しやすいことを示唆している。 3.常温常圧において、噴射直後のDME噴霧に運動量理論を適用するために、従来と異なるモデルを用いて噴霧角を定義する必要がある。 4.本実験は大気の噴霧を観察したが実機関にこける噴霧特性を把握するために、今後圧力容器内燃料噴射実験を行う必要がある。
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