1.電解質水溶液の表面について平衡系の分子動力学計算を行い、イオンが表面に対して負吸着する様子が再現された。水溶液の濃度をパラメータとすると、連続的に表面層が変化していく様子が見られた。次に非平衡系の分子動力学計算を行い、水溶液表面での凝縮係数を考えた。水溶液表面での凝縮係数を考える場合には、気体分子が液体表面に捕獲されるか否かの確率を議論するだけでは不十分であり、表面層全体でのダイナミックスを考える必要があることを指摘した。また、著しく非平衡が大きい場合は、表面層の分子のダイナミックスが著しく異なる可能性があることを指摘した。 2.界面活性剤が含まれる系に計算コードを拡張した。水溶液に界面活性剤を微量添加すると、吸収時に界面攪乱が起こり、水蒸気吸収を促進する。どのような物質が界面攪乱を引き起こすかについて、実験的にはおおよそ見当がついているが、物性値から判断することは難しい。界面攪乱のメカニズムについてモデルを提案することも重要であるが、同時にどのような分子の特性が表面揺らぎを引き起こすかについて検討することも重要である。そこで、分子動力学計算を用いて、揺らぎの問題を考えることにした。現在のところノーマルアルコールをモデル化したものを界面活性剤分子として扱っている。表面での構造的、動的性質を明らかにし、どのような分子モデルが大きな表面揺らぎを引き起こすかについて、平衡系の計算を行っている。 3.界面活性材の空間的な不均一を議論するために、計算コードを大規模計算適合するように拡張することを検討している。この点については今後の検討課題である。
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