本年度は、シリコンクラスターや金属炭素混合クラスターを具体的な対象として研究を行った。 シリコンクラスターとエチレンとの反応実験は過去にもイオンドリフトを用いた実験があるが、FT-ICRとの結果に違いが生じていたため再検討が必要であった。本研究ではSi^+_<13>の安定性を確認し、生成物のできかたにはいわゆるマジック数的なものがあることが分かった。また、水素原子が吸着することに反応性のできかたにはいわゆるマジック数的なものがあることが分かった。また、水素原子が吸着することに反応性が大幅に低下することが確認された。反応実験を行った範囲において、その反応定数の傾向が過去に行われたイオンドリフトの実験と定性的にほぼ一致して結果が得られた。一方、一酸化窒素との反応実験からはクラスターサイズが24以上でバルクに近いような反応結果(置換反応)を示すこと、23量体以下では解離反応がおきることが確認された。またFT-ICR装置の改良も行い、クラスターの光解離実験やレーザーアニーリング実験を可能にした。 炭素ナノチューブや金属内包フラーレンを生成する際に用いられる炭素混合試料を用いてレーザー蒸発法で生成した金属炭素混合クラスター(MC_n)および炭素クラスター(C_n)の質量分析および化学反応実験をFT-ICR質量分析装置にて行い、その幾何構造を検討した。MC_nの生成効率および化学反応性が配位する金属の種類に大きく依存することが分かった。また今回の一連の測定からLaC_n(n=偶数、n≧36)は金属を内包した構造であり、MC_n(M=NiまたはCo)は金属を内包していない構造であることが考えら得られるとの知見が得られた。
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