フォトクロミズムを熱流体場の可視化に応用した感光染料励起法を用い、紫外線照射による励起着色部の移動距離からの速度分布計測とともに、着色部の消色速度から温度分布をも非接触かつ同時に画像計測する方法を微細流路の壁面近傍におけるミクロな界面現象の解明に適用することを試みた。感光染料励起法による速度・温度計測に先立ち、まず固液界面における界面現象に顕著な影響を与えうる撥水性壁面に注目した。数cm程度の通常サイズ流路において壁面に超撥水(水滴接触角150度以上)処理を施すことにより、層流領域で壁面において流体のすべりが生じ流動抵抗が低減するという報告があり、流動抵抗の影響が顕著に現れる微細流路への応用の期待が大きい。しかし、その詳細な速度分布、特に壁面での実際のすべり速度の計測はされておらず、撥水性界面現象の詳細については未だに解明されていない。そこで、本研究では直径数mmのガラス円管内に内部流動の様子が確認できるよう平滑な表面構造を有する無色透明なシリコーン系撥水剤を塗布し、水単相流および水・窒素系二相流の流動特性と圧力損失の計測を行った。単相流において摩擦損失係数について検討したところ、通常のガラス管での結果とともにポアズイユ流れのものとほぼ同じ結果となり、今回用いた撥水壁においては壁面での明確なすべりは確認できなかった。また二相流の実験では、常に壁面において液膜を有する通常のガラス管に対して、撥水管を用いた場合には気相部分の壁面で液膜のない流動様式が見られ、その状態では非常に大きな流動抵抗となっていることが分かった。今後は液膜の有無による壁面近傍の流動特性の違いと熱交換器を想定した伝熱特性等を感光染料励起法により明確にする予定である。現在感光染料が有機溶媒にのみ溶融可能という問題はあるが、撥水剤の代わりに撥油剤を塗布することにより同様の実験が可能と考えられる。
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