本研究は、申請者らが開発してきた新しい非定常短細線加熱法を用いて、シリコン単結晶成長やプラスチック形成製品などに不可欠である溶融シリコンや溶融ポリマーなど様々な高温融体の熱伝導率と熱拡散率を測定することを目的としたものである。本年度に得られた主要な成果を以下に列挙する。 1.耐熱、耐腐食性の高温ルツボ炉および温度制御装置の設計を行い、必要とされる測定精度に応じた実用的な装置を製作した。 2.スパッタ装置を用い、プローブに耐久性、耐熱性、耐食性のある絶縁被膜(高純度アルミナAl_2O_3)を施すコーティング実験を試みた。その結果、スパッタ装置の特性に対応して、良質な被覆膜を形成するための槽内圧力、キャリアガス流量、酸素ガス濃度などについて最適な条件が明らかになり、高温に適用できるセラミックコーティングの技術を確立した。 3.熱物性値が既知の流体を用いて、実測を行い、装置全体の評価を行った。 4.固体領域から熱分解温度まで、4種類のポリマー(ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレンおよびポリスチレン)の実測を大気圧下で行い、熱伝導率(誤差±1%以内)および熱拡散率(誤差±5%以内) の温度依存性を明らかになった。 5.測定シーケンスのプログラムの修正改良を行い、簡易測定用の場合、測定の開始から結果の表示までが簡単なキー操作で可能なソフトを完成させた。
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