直接噴射式ディーゼル機関に用いられている単孔ホールノズルの噴孔部を改良し、噴流の微粒化に大きな影響を与えるキャビテーションが常に発生する微粒化促進ノズルを考案した。この微粒化促進ノズルの低圧噴射時における噴霧特性と、単孔ホールノズルの噴霧特性を比較し、微粒化促進ノズルの性能評価を行った。 初めに、噴孔径Dが比較的大きな可視化ノズルを用いて、ノズル噴孔内の流れと噴流の分裂挙動を観察し、隙間上部と下部の噴孔管長L_1、L_2を種々に変化させて、低圧噴射時において最も良好な噴霧が得られる条件を決定した。その結果、隙間上部の噴孔管長L_1の長短は、噴流の微粒化に影響しないが、隙間下部の噴孔管長L_2は、噴流の微粒化に大きく影響し、L_2が短いノズルほど噴流の微粒化が促進されることが明らかになった。 次に、実機に近い噴孔径(D=φ0.3mm)のノズルを用い、噴霧の観察と、分裂長さ、噴霧角およびザウタ平均粒径といった噴霧特性の測定を行った。単孔ホールノズルを用いた時の噴射圧力は、最高200MPaまで変化させ、微粒化促進ノズルは、最高10MPaまで変化させた。噴射圧力が10MPaにおける微粒化促進ノズルの噴霧と、200MPaにおける単孔ホールノズルの噴霧を比較すると、微粒化促進ノズルの噴霧は、単孔ホールノズルよりも噴霧の広がりが大きく、微粒化促進ノズルは、単孔ホールノズルと比較して同等、もしくは良好な噴霧特性が得られた。 したがって、本研究で考案した微粒化促進ノズルの噴霧と噴霧特性を評価すると、実機ディーゼルノズルの噴射圧力よりもはるかに低い噴射圧力で、同等もしくはそれ以上の良好な噴霧特性が得られており、小さなエネルギで効率良く微粒化させることが可能であり、噴霧特性を大幅に改善することができた。
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