研究概要 |
本研究では,移動体の加速度を計測し,その値を積分することにより距離を推定する方法について検討を行っている.今年度は,次の項目について研究を行った. (1)センサ出力には,本来測定したい移動体の加速度項の他に,a.梁の自由振動項(AC成分),b.振動中心からの梁のずれに伴う誤差の項(DC成分)が含まれる.a.の項の積分値は,理想的には0となるはずであるが,実際にはそうはならない.そこで,同センサの中にオイル(動粘度40[cSt]の機械油)を注入することにより,ハード的に梁の自由振動項を小さくした.可動式の直動レールを用いて25[cm]の距離を1[s]で往復運動させるという実験を行った.その結果,t=0.5[s]での推定距離データの標準偏差は,オイルを入れない場合と入れた場合で,それぞれ1.05[cm],0.70[cm]となり,オイルの注入により,データのばらつきを抑えることができた. (2)車輪型移動ロボットを製作し,加速度センサを2つ用いて2次元距離推定を行った.ロボットは,2.3[m]のS字の軌道を3[s]で走行させた.その結果,目標地点での位置誤差は,オドメトリの場合の約81[cm]に対し,加速度計の場合は約56[cm]であり,全体の誤差も加速度計を用いた場合の方が優れていた.さらに実軌道の最終点の値を用いて,推定距離を補正することにより,最大でも約4[cm]程度の誤差で,ロボットの位置を推定することができた.ただし,この補正は,(1)のb.に対するものと,センサ出力値と実際の加速度間の変換パラメータに対して行った. (3)推定距離の補正を(2)ではオフラインで行っていたが,これはオンラインで行うことが望ましい.そこで,移動体の動作開始前に予備動作を行い,その間に補正値を求めることを試みた.実験には,(1)のスライダを用い,予備動作として5[cm]の距離を1往復させ,その後,25[cm]の距離を3往復させた.3往復目の距離推定結果は,補正前が31[cm]であるのに対し,補正後は,26[cm]となり,リアルタイム位置推定が可能であることを示せた.
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