電磁障害や放射線障害などの環境障害に強い光サーボシステムは魅力的な制御システムである。我々はこの光サーボシステムの実用化を目指し、光信号を流体の圧力信号に変換する光-流体変換素子や素子の微小差圧を増幅する流体増幅器を開発し、台車の位置決め制御を一例とした光-流体制御システムの開発を行ってきた。本研究では、光サーボシステムの実用化の一環として光-流体制御弁の開発とその性能改善を目的とする。研究実績としては、光信号から流体の圧力信号に変換する光-流体変換素子の出力圧力・流量特性を改良するため、フルイディクスの増幅器である層流比例形素子(LPA)をワイヤーカット加工機により製作し、光-流体変換素子の再構成を行った。その結果、素子の光パワーから出力差圧までの変換係数は0.07kPa/mWとなり、従来の0.01kPa/mWに比べ7倍程度改善された。また、光-流体変換素子からの微小流体パワーを増幅する複動式膜型流体増幅器を改良するため、増幅器のフラッパ可動ゴム膜の入力圧力-変位特性をレーザ変位計を用いて調べた。さらに、それを基にフラッパ膜部分の解析を行い、ゴム膜の厚みや直径などの構造パラメータと、バネ定数や減衰係数などの弁設計パラメータとの関係を表わす実験式を導出した。また、以前の研究で構築した光サーボ弁(光-流体変換素子と流体増幅器から構成される弁)の解析モデルを用いて、弁の速応性の改善を目指した最適設計を行い、新たな流体増幅器を試作し、光サーボ弁を再構成した。その結果、むだ時間と時定数を含めた弁の応答時間は0.22秒と、従来の0.7秒に比べ3倍程度改善された。 今後は現在製作の遅れている半導体レーザダイオードコントローラと光流体変換素子を一体化した電気-光-流体変換器を試作し、それを用いた光流体制御弁の開発を行う予定である。
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