FMS(Flexible Manufacturing System)の運用を考える際、各種生産工程間における搬送システムは重要な要素である。特に、天井クレーンは、(a)敷地内の上下方向を移動することにより、敷地面積をとらない、(b)3次元空間を自由に移動することで敷地内に置かれた障害物を回避するなどのフレキシビリティがある、(c)搬送システムを構築する際のコストが少なくてすむなど、2次元の搬送システムに比べてその利点は多く、応用範囲も広いと考えられ、FMSの運用の自由度を高めるためにも、その自動化が望まれる。そこで本研究では、「FMS指向自律走行天井クレーンのリアルタイム搬送制御システムの開発」を行った。まず、(1)オフラインでCCDカメラとレーザーラインマーカーを用いることにより障害物の位置を認識し、スタート地点から目標地点までの最適経路を分枝限定法およびポテンシャル法で探索し生成するシステムの構築。そして、(2)オンラインでその経路に沿って、更に近接センサ、無線を利用し、固定障害物や移動障害物(搬送車等)を正確に認識することで、搬送中の障害物回避や協調作業を行う搬送車への荷物の受け渡しを行い、しかも搬送中の荷物の振れや停止時の振れ止めを考慮した制御システムを構築を行った。本年度は、特に上記(2)のオンライン制御確立のために、オブジェクト指向型言語JAVAを用い、ファジイ制御に基づいた移動障害物回避ソフトウェア開発を行った。また、目標軌道となる最適経路に追従させるべく、荷の位置に着目したモデルと制御方法の提案を行った。今後は計画された移動経路の追従性や位置決め精度を高め、搬送中や搬送終了時の荷振れを抑制し、高速搬送が可能な制御システムの開発を行う。具体的にはフィードフォーワード入力と最適サーボ系を併せた2自由度系の構築を考え、荷物の軌道の追従性を考慮した制御システムの開発を行う。なお、一連の研究成果は、平成11年8月ドイツで行われたヨーロッパ制御国際会議で論文発表を行った。
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